管理栄養士 中居 有紀
世界に誇る長寿国、日本。今月には敬老の日があります。
老化について考える良い機会です。
老化について、当院では老化に抵抗するのではなく、健康な生活の継続によってゆっくりと楽しく迎え入れる『スローエイジング』の考え方を取り入れています。
敬老の日を機に、改めて『老化』について考えるとともに、体を造る根本である「食事」についても見直してみましょう。
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■ 老化の原因
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老化とは、「加齢に伴う生理機能の低下」です。
この老化には、遺伝的要因や食事などの生活要因、環境などの要因が複雑に影響を与えています。この中で、寿命に対して遺伝が与える影響は、2―3割程度といわれています。残りの7―8割は、遺伝以外の要因である、遺伝子の異変や免疫力の低下、また体の細胞や組織を酸化・変質させて衰えさせる活性酸素が加齢に影響を与え、老化や寿命につながると考えられています。
この活性酸素は本来、体内でエネルギーを生産したり、異物が体内に侵入した時に攻撃する働きを持つなど、体にとって有用な働きも持っています。
しかしこの反面、偏った食事や不健康な生活習慣などにより活性酸素が過剰に作られてしまうと、脂質やタンパク質、遺伝子を酸化させて損傷させ、がん細胞を発生したり、不飽和脂肪酸を酸化させて過酸化脂質をつくり、動脈硬化や心疾患などの生活習慣病を引き起こしたりして、身体の機能を衰えさせ、老化の原因となり易くなります。
この老化や様々な生活習慣病を引き起こす、過剰な活性酸素を発生させないためにも、食生活が大切です。
これを機に、スローエイジングを目指した食生活を見直しましょう。
※当院では、心臓・人間ドックのコースの中に、この『老化』に影響を及ぼすといわれている活性酸素や抗酸化力(過剰な活性酸素による酸化作用を打ち消す力)の計測が組み込まれています。
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■ スローエイジングと食事
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日々の食事の基本は、偏りのないバランスのとれた食事を規則的に摂ることです。
(この内容については、当クリニックの栄養指導にて、お気軽にお尋ねください)
更に老化の原因となり易い『活性酸素』による酸化を防ぐためには、抗酸化力を強化する抗酸化力の高い食材を効果的に取り入れることが大切です。
抗酸化成分には、ビタミンA・C・Eの他、カテキン、クルクミン、クロロゲン酸などのポリフェノールや、サポニン、アリシンなどの成分が報告されてきています。これらの成分が多く含まれている食品を積極的に摂取し、抗酸化力を高めて動脈硬化や生活習慣病になりにくい体を造っていきましょう。
今回は特に抗酸化力の高い野菜(抗酸化力の指標:ORAC値の高い野菜)を掲載します。
◆抗酸化力の高い野菜
・アスパラ ・キャベツ
・ほうれん草 ・にんじん
・ナス ・玉ねぎ
・サニーレタス ・黄ピーマン
・ブロッコリー など
また野菜だけでなく、ビタミンEやアスタキサンチンを多く含む魚類=紅鮭、ブリ、マグロなども上記の野菜と同程度のORAC値が計測されています。
主菜には抗酸化力の高い魚を、副菜には抗酸化力の高い野菜を上手に組み合わて、バランスのとれた、スローエイジングとなる食生活を心がけましょう。
「カロリー」や「塩分」などのように、今後食品を選ぶ時は『抗酸化力』にも注目して選ぶのも良いでしょう。
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■ 抗酸化力UPについての注意点
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●料理に使う油に注意
古い油を使用することで、既に酸化した状態の脂肪分を体に取り込んでしまうことになります。油を使う時は、オリーブ油などの植物性のものを使用し、保存する場合も出来るだけ空気に触れないように工夫しましょう。また長期の保存は避けるようにしましょう。
●悪玉コレステロール(LDL)を減らす
悪玉コレステロール(LDL)は、活性酸素によって酸化されることにより動脈硬化を促進します。活性酸素が引き起こす問題を少なくするためにも、コレステロールが多いといわれている食品(卵黄、魚卵、ししゃも、イカ・タコ・エビ、乳製品など)の摂り過ぎには注意しましょう。
●紫外線の浴び過ぎに注意
紫外線を浴びると、皮膚に活性酸素が発生し、皮膚のシミをつくる原因となったり、皮膚の弾力をつくる組織をも変性させ、シワをつくりやすくすることがあります。更に、強い活性酸素が皮膚に大量に発生すると、皮膚がんの原因となることもあります。陽射しの強い日は、特に皮膚や目などの紫外線対策に気をつけましょう。
またスローエイジングには、運動も大切です。当クリニックでは、医師等のクリニックスタッフが一緒に頂上を目指す『高尾山クラブ』や『高尾山ウォーキング』を開催しています。
お気軽にクリニックスタッフにおたずねください。