医療コラム

年末に相応しい食事は?

管理栄養士 中居有紀

2010年も残すところ、あと10日余りとなりました。
 楽しい思い出、心温まる思い出、しんみりする思い出など、数々の思い出が、今年も生まれたと思います。

 たくさんの思い出を残すことが出来たのも、健康な身体あってのもの。
 身体は資本です。

 年間約1000回は行い、その身体を造っている『食事』。
 生活にも密着せざるを得ない『食事』。
 
 2010年は、誰と、どんな食卓を、どんな気持ちで囲んで来られたでしょうか。
 どんな『食』を楽しんで来られたでしょうか。

 当クリニックの来院者の方の中には、『食材の本来の味そのものを楽しむ』ことや、『身体が自分の適量を知っていて、自ら自己管理する習性がある』ことなど、自ら健康的な食生活を「楽しく」実行されている方々がいます。このような方々は、食事以外でも日々生き生きと活動されているのを感じます。
 そしてその背景には、子供時代に長年かけて囲んできた『食卓』の存在があると、「栄養指導」の時間の中で感じさせて頂くことが多いように思います。

 年末、お世話になった身体に感謝して、一緒に食卓を囲んでくれた人にも感謝して…。
 新年も新たに『食』や『運動』から健康な身体を造って、より一層元気な心と、素敵な思い出をつくっていきたいものです。

 今回のテーマはそんな年末の定番メニュー、年越しそばについてです。


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■ 年越しにそばを食べる理由
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 年越しに、そばを食べる理由は諸説ありますが、
・そばは細く長くのびているため、家運を伸ばし、寿命を長く(永く)延ばすという縁起かつぎ説
・そばは切れやすいやめ、一年の苦労や厄災を切り捨てて新年を迎えるという説
・そばによって体内を清浄にして、新年を迎えるという説
 というものが多く知られています。


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■ そばの栄養
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 そばに多い栄養素には、次のようなものがあります。

・ビタミンB1
 「疲労回復ビタミン」と呼ばれるビタミンB1は、摂取した糖質をエネルギーに変換するのに、不可欠な存在。体での貯蔵量が少ないため、不規則な食生活では不足しやすくなる可能性があります。年末の慌ただしい時期にも不足している方も多いかもしれません。

・ビタミンB2
 タンパク質や脂質、糖質などの代謝に関係する酵素を助ける働きがあります。皮膚や粘膜を保護し、肌・爪・髪の発育や体全体の抵抗力を強めると考えられています。

・ルチン
 ポリフェノールの一種であるルチンには、抗酸化力が備わっています(抗酸化力については、10月のコラムにも掲載しています)。活性酸素を除去し、いわゆる「身体のサビをとる」働きがあると考えられています。特に「韃靼そば」はルチンが豊富なことで知られています。

・良質なタンパク質
 皮膚や筋肉、免疫力の元となる栄養素、タンパク質。
 そば1人前(例:ゆでそば220g)には、うどん1人前(例:ゆでうどん220g)やごはん茶碗1杯分(例:110―150g)よりも多くのタンパク質が含まれています。また、このタンパク質は、構成されているアミノ酸のバランスが非常によく、「良質なタンパク質」と考えられています。

 良質なタンパク質源であり、疲労回復の働きも、また「体のサビをとる」と云われている抗酸化力の働きも持つ『そば』。その形態から云われる縁起かつぎとしてだけでなく、まさに年末を締めくくるのに相応しい食品なのかもしれません。

 年末年始と宴会の多い時期となりますが、身体を大事にしてお過ごしください。
 2011年もよろしく願い致します。