医療コラム

食事のあり方 -原発事故を経て-

管理栄養士 中居有紀

 地震からひと月以上が経ちましたが、現在も尚、福島県の原発事故は予断を許さない状況が続いています。同時にこれは、自然から生まれる野菜や魚介類といった、食についても大きな影響を与え、結果的に福島県や北関東地方で育った食材が出荷を制限される事態に至りました。また検査をクリアしても、スーパーのそれらの食材が売れ残っている様子も見かけます。
 地震・津波という天災を経て、人工物によって汚染されかけている自然食材。そしてその食問題により不安を抱える人々。自然や、そこから採れる食材に感謝し、食のあり方を改めて見直したいものです。

 たとえば当たり前のように用いられている添加物や加工品、人工調味料は、手軽に利用できる反面、これに依存してしまうと、それ以前にある自然から生まれた食材本来の魅力を忘れがちになってしまいます。
 逆に野菜やきのこ、魚介類などの自然の食材は、人工的な手を出来る限り加えずに素材そのものを食す(あるいは活かす)ことで、素材そのもののおいしさを感じることが出来るだけでなく、健康的・ヘルシーな食生活を送ることができ、生命の活力となります。

 当院では開院当初から、澤渡院長の診療方針のもと、自然の形に近いお食事の仕方についてお話させて頂いてきました。(個人の病態にもよりますが)「まごわやさしい(※)食品を積極的にとること」、「塩は自然塩を使うこと」、「お水を積極的にとること」等、医師や管理栄養士からお話を受けた方もたくさんいらっしゃると思います。
 水も塩分も、身体にはとても大切なもの。適切に補給していくようにしましょう。


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■ 水
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 生命誕生にも密接に関わっていると考えられている水。
 人間の身体の60%は、この水でできています。
 生命の最小単位は細胞ですが、この細胞を構成する要素を、水が結び付けています。
 必要水分量の目安は、1.5リットル。
 水が不足すると、血液が粘りのあるどろっとした状態になります。
 健康を保つ上でとても大切な水。
 1.5リットルを目指して、積極的に飲むことを忘れないようにしましょう。

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■ 塩
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 上記にあるように、身体の60%を占める水、この水分は古代海水と同程度の塩分を含んだ塩水として体内で存在しています。
 この塩分にも種類があり、当クリニックでは精製塩よりも天然塩を使うことをお伝えさせて頂いています。精製塩のように原料塩からにがりなどの微量なミネラルも取り除かれて精製されたものの場合はミネラルなどほとんど含まれていません。これに対して海水から煮詰め濃縮される天然塩の方の場合、人間の体液の組成元素に近いといわれるミネラルが含まれており、より自然に近い形で塩分を摂取することが出来ます。


 添加物を適切に利用していくことも大切ですが、自然から採れる素材に感謝して料理し、そのものを味わい、そして身体に活かして食していきたいものです。


(※)まごわやさしいとは、各食材の最初の文字をわかり易く言いかえたもの。(ま:まめ、ご:ごま、や:野菜、さ:魚、し:しいたけ、い:芋)伝統的な日本食材で、野菜・イモ類・魚介・海藻などをおかずとして組み合わせるスタイルです。

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