医療コラム

本当はどうなの?炭水化物制限について




2019年11月
管理栄養士 小西


11月も後半となり、大分寒くなってきましたね。
空気も乾燥し、風邪をひきやすくなる季節です。
うがいや手洗いをしっかりと行い、体調管理に努めましょう。


さて、栄養相談での会話の中で「痩せたいのでご飯を抜いています」と
おっしゃる方がいらっしゃいます。
その背景として、現在炭水化物を抜いたダイエットが世間で流行しているからだと
思います。
主食のご飯、つまり、「炭水化物=良くないもの」と思っている方が非常に増えているように感じます。
しかしその一方で、ご飯を抜いた分、肉はたくさん食べても大丈夫と考えている方も
多いようです。

実際のところ、炭水化物を抜いた食生活を続けるとどうなるのでしょうか?








炭水化物を抜いた食事を続けたときに出る症状




脳が働かなくなる
脳にとって即効性のあるエネルギー源はブドウ糖です。
脳では全エネルギーの18%消費します。
主食となるご飯やパン、麺類にはでんぷんが含まれており、
これはブドウ糖の元となります。
炭水化物を制限すると、脳のエネルギー源であるブドウ糖が供給されません。
そのため、頭がぼーっとする、やる気が出ない、集中力に欠ける、思考能力が低下する
などの症状が出ます。
また、認知症が進むことも分かってきています。


おかずの食べ過ぎで腎臓に負担がかかる
炭水化物を制限すると、おかずとして肉・魚・大豆製品・卵のたんぱく質を多く含む食品の摂取が多くなります。
たんぱく質を摂取し、体の中で代謝されると老廃物が残ります。
この老廃物をろ過して体の外に出しているのが腎臓です。
たんぱく質をたくさん摂ると腎臓が一生懸命働かなければいけません。
おかずを食べ過ぎると腎臓に負担がかかってしまいます。


動脈硬化が進む
炭水化物を制限すると、上記で説明したように、肉などのたんぱく質を含む食品を多く
食べる事になります。
肉には、たんぱく質の他、飽和脂肪酸などの脂肪も多く含まれています。
主食を抜いて、肉料理や肉の揚げ物などをたくさん摂ると脂肪の過剰摂取となり、
中性脂肪や悪玉コレステロールの上昇につながります。
これらが原因で、動脈硬化が進み、心疾患や脳血管疾患のリスクが高くなります。


便秘が深刻になる
ご飯やパンなど主食となる炭水化物は糖質と食物繊維が含まれています。
炭水化物を抜くと食物繊維の摂取量が低下してしまいます。
食物繊維は便を作る材料となるため、主食の炭水化物を抜いてしまうと便の量が
減ります。
その結果、便秘が深刻になり苦しんでしまいます。





厚生労働省が策定する日本人の食事摂取基準では、炭水化物の摂取量を、
全体のエネルギーの50~65%を目標量に設定しております。
炭水化物はエネルギー源となる重要なものですので、極端な制限はせず、
主食・主菜・副菜をそろえて食べ、バランスのとれた食生活を送っていきましょう。