2013年9月20日
管理栄養士 中居有紀
十五夜も過ぎ、朝夕涼しくなってきたこの頃。
クリニックで、印象的な出来事がありました。
お顔半分が全体的に青あざになり、首から左手全体を包帯に包んだ女性が、栄養指導室を訪ねてきました。
「道を歩いていたらね、工事の資材が上から落っこちてきて当たってしまったの。でも命が助かっただけ、ありがたいと思っているわ。」
このお方は、いつも集団栄養相談会に参加してくれている60代の女性です。にこやかにこう言って帰っていかれました。お顔の青あざの程度から見ても、かなりの事故の大きさだったと推察されますが、それにも拘わらず一言も事故を非難したり悲観したりせず、良い面だけを見て微笑まれているお姿に、頭が下がる想いでした。
後日、定期診察の際に待合室にいらしたので、お声がけすると、事故から三週間とのこと。未だ包帯で包まれた腕を抱えながら、経過を教えてくださいました。
「顔の色はだいぶ良くなりましたでしょ。でもなにせ片手が使えないなんて初めてのことですからね、口だの足だの駆使して生活していますよ。とにかく無理しない程度に積極的に自分で動くようにしています。これからの自分に全部返ってくることですからねぇ…」
自分に全部返ってくる…何でもそうだと思いますが(私は反省すべきことばかりですが…)、食事もまさに。健康的な食生活は、身体への投資。健康が維持できれば、10年後の医療費が浮いて家計の助けにもなるかもしれません。少しでもそんな皆さまのお役に立てたら、うれしく思います。
そこで、今回は毎日の食事に欠かせない“ご飯”について振り返ります。勘違いされていることも多い、白米・玄米・雑穀米の良い点や気を付けたい点について、改めて比較してみます。
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■ご飯1杯の適量は…?
以前にも何度か書かせて頂いていますが、1食のご飯の目安量は150g。
肉体労働者や成長期の子供などの場合は別ですが、それを除いて一般的なご飯の適正量は、1食につき150g(250kcal/白米)。白米でも玄米でも雑穀米でもこれが目安。思っているより少量かもしれませんが、一度は量ってみることをお勧めします。
■白米・玄米・雑穀米の比較
※精白度合いが大きくなるにつれ、
玄米(または発芽玄米)<三分つき米<五分つき米<七分つき米<胚芽米<白米
白米
玄米を精米したもの。玄米から、ヌカと胚芽を取り除き、胚乳のみにしたのが、白米です。
良い点:玄米などと比較すると、デンプンと水分が多く含まれていて、炊くとふっくら、もちもちと美味しく感じられるのが魅力。吸水時間も比較的少なくて済むので、炊飯の手間もあまりかかりません。
気を付けたい点:GI値が高く、比較的血糖値が上がりやすい。精米されているものは、それ分体内で吸収されやすくなります。血糖値の上昇をなるべく緩やかにしたい糖尿病などをお持ちの場合は、野菜を先に食べるなどの工夫をすると良いでしょう。また急に上がって急に下がるという変動が体内の老化速度を速めてしまい、美容などに悪影響とも考えられています。
玄米
稲のもみ殻だけをとった状態の、精白する前のお米。周りをヌカに覆われているため茶色い。
良い点:精白でヌカや胚芽が削ぎ取られていない分、生活習慣病予防や疲労回復に働くあらゆる種類の栄養素が、白米よりも多く含まれています。食物繊維なら3―6倍、ビタミンB1なら5―8倍、その他ビタミンB2、B6、E、鉄分、亜鉛、カリウム、葉酸など。またカロリーは、白米とほとんど同じ。同じカロリーなら、たくさんの栄養素がとれた方がヘルシーです。さらに白米よりも噛みごたえがあるため、満腹中枢を刺激して太りにくくする働きも期待できます。
気を付けたい点:硬くて粘りにも欠けるため、そのまま食べるにはあまり適していない。吸水時間を多めにしたり、専用の釜を使うなどのひと手間が必要。
雑穀米
白米に玄米、あわ、ひえ、きび、ハトムギ、押し麦、大麦、黒米、アマランサスなど数種類の雑穀を混ぜて炊くご飯。スーパーなどでも食べやすいように調整されたものが、たくさん売られています。
良い点:白米も混ざっているので、比較的食べやすいうえ、玄米同様に食物繊維やミネラルなどの生活習慣病予防に必要な栄養素が多く、抗酸化作用などの働きも。また好みや体質に合った雑穀を選んで配合して、自分流にアレンジすることが出来るのも魅力。
気を付けたい点:配合比率にもよりますが、白米や玄米よりもややカロリーが高くなることがあるため、量の調整が必要。また白米と比較すると、もっちりした食べやすさには欠ける。
個人指導で皆さんのお話をお聞きしていると、白米>雑穀米>玄米の順に、食事に取り入れやすい傾向にあるようです。毎日食べる“ご飯”のこと。玄米や雑穀米も積極的に取り入れて、ヘルシーな身体を作ってくださいね♪
(No.37)