医療コラム

■ビタミンCたっぷり、秋の味覚『柿』

管理栄養士 中居有紀

クリニックの入り口にも、赤や黄色の落ち葉が舞うようになりました。
食欲の秋も深まり、栄養指導の席でも「新米が美味しくて食事がとまらない」「梨や柿、ブドウなど秋のくだものを、ついつい一日に何回も食べてしまう」といった声が聞かれます。実際秋から冬にかけて体重が増えてくる方も多く、『寒くなると太る』という方は、注意が必要になってきます。

この『食欲の秋』という言葉は、この季節が「実り・収穫の秋」であったり、旬の食材が多く「味覚の秋」という生活的な解釈から、「夏バテが解消され、寒さへの抵抗力をつけていくため体がエネルギー補給しようと食欲が高まる」「日照時間が減ってセロトニンという神経伝達物質が減るため食欲が高まる」という生理学的な解釈まで、様々になされてきたようです。

長い歴史の中で昔から、生活的・生物学的両面で人と密接に関わってきた『食』、食べるということ。旬の素材を味わったり、栄養面に配慮して健康的な食べ方に気を付けたり、家族や仲間と食卓を楽しく囲んだり、そうして『食べる』ことを大切にしてこそ、健康的な心身が出来上がっていきます。

今回は、そんな秋を食から楽しませてくれる代名詞、『柿』についてがテーマです。


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■ 柿の種類と、渋みのもと「タンニン」
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柿の種類が「甘柿」と「渋柿」に分かれるのは有名ですが、これは渋みを持つ「タンニン」を口の中で感じるかどうかの違いによるものです。
甘柿の場合、果実の成長後半にタンニンが固まり、水に溶けなくなるため、口の中で舌に渋味を感じなくなるのに対し、渋柿は、成熟してもタンニンが固まらなかったり、部分的にしか固まらなかったりするために、渋味を感じます。

渋柿を食す場合は、アルコールや炭酸ガスを使って「渋抜き」をしますが、これは渋みのもとであるタンニンを感じさせないようにするもの。アルコールにより柿の中で発生するアセトアルデヒドという成分がタンニンとくっつくことで、渋味を感じにくくさせてくれます。

また甘柿と渋柿は、更に多くの品種に分かれます。もっとも多く栽培されているのが甘柿の「富有(ふゆう)」、この他渋柿の「平核無(ひらたねなし)」や「刀根早生(とねわせ)」、「甲州百目(こうしゅうひゃくめ)」なども多く栽培されている品種です。ひと昔まえに一世を風靡した、硬い肉質でコリコリとした食感の「次郎柿(じろうがき)」は、現在は全体の3%程度の少ない生産量に留まっています。

「コリコリ」していたり「トロリ」としていたり、食べる地域によって、柿の口ざわりが違うのは、熟し加減だけでなく品種の違いが大きく影響しているようです。


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■ 柿の栄養
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「柿が赤くなると、医者が青くなる」ということわざがあります。秋になって色づいた栄養豊富な柿を食べるようになると、病人がたちまち少なくなってしまうから、医者が困る、という意味。そんなことわざにもあるように、くだものの中でも特に柿には、多くのビタミン・ミネラルが含まれています。
特に多いのは、ビタミンC!柿100g中(柿1個は150g)には70mgのビタミンCが含まれています。みかん100g中の32mgに比べると、2倍!強い抗酸化力を持つビタミンCは、LDL-コレステロールの酸化を防いで、血管疾患を予防してくれます。
またβ‐カロテンやタンニンにも、活性酸素を消去してくれる抗酸化力がたっぷり。柿に多く含まれる栄養素の一つです。
更にアルコール分解酵素も含まれているため、飲酒前に食べると二日酔い対策にも一役買ってくれます。

ただし、食べすぎは太るもと。血糖値が気になる方も、その摂取量には注意です。
柿は、ちょうど1個が約80kcal(糖尿病交換表の1単位にあたる)。くだものを食べるのであれば、柿なら一日1個まで。それ以上は高カロリーになってしまうので、注意しましょう。


あと少しで冬がやってきます。年末年始ももうすぐ。
健康的な年越しに備えて、秋の味覚も健康的に楽しみましょう!

(№.27)

※画像は、トロリとした食感が特徴の新潟産「おけさ柿」です。

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  2012/11/20   澤渡循環器クリニック